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2009年05月12日(火)更新

オーナーが会社を売るとき (枕をぬらした夜)

Q:M&Aで会社を売却したら、従業員はリストラされるでしょうか。



A:会社を譲渡するときの条件として、「従業員の労働条件を変更しない」など、

契約等で縛ることで対応することができます。(通常1年~2年の期間)


このケースでは、この条件を満たしてくれる相手としか交渉しないということに

なります。オーナーは、相手先としてふさわしいか。会社にとって、従業員にとって

メリットがあるか、などを検証することができます。いわゆるシナジーです。



しかしそのような交渉ができるのは、会社の財務体質が良好であること。

利益が出ていること。そしてなにより時間的余裕があることが必要条件となります。


結婚でたとえるならば、適齢期に結婚すること。適齢期を逃したら、えり好みは

できないということでしょうか。



では、「そんな優良企業を譲渡する経営者が、本当にいるのか」と聞く方がいます。

これが以外と多い。この経済環境ですから、以前ほど粗利があるわけではないです

が、立派な会社はあります。


“実は、優良企業であればあるほど、事業承継が難しいということになります。”


人によっては、「何か簿外負債があるのではないか」と疑ったりして。

そういうときは、いくら口で説明してもわかってもらえません。

じゃ、どんな方が、かわってもらえないのかというと、それは、普通のサラリーマン

です。(俗に、普通の人)。


正直、私も、今から20年前の山一證券時代は理解できませんでした。

優良企業に対しては、株式公開による事業承継対策を提案していました。

流行でもありましたし。でも、今の時代、必ずしも株式公開がいいとは限りません。


オーナー経営者が抱えている後継者問題を、オーナー経営者以外の人間が、

巷に出回っている本を、何冊か読んだところで、そう簡単には理解できないのが

現実です。



あるオーナーからこんなことを聞きました。

株式譲渡の調印式の前夜に、創業時からの思い出がフラッシュ・バックしてきた

そうです。創業当時のこと、資金繰りにかけずり回ったこと、楽しかったことなど。

今までの思いが全部、蘇えってきたそうです。


「明日ハンコウ押したら、他人のものになる」と思ったら、

その夜は眠れず、枕をぬらしたそうです。


次回は、中小企業の株価の考え方について説明したいと思います。
e-mail:tsujimatsu.ritsuo@actusadvisory.com